Jobs - Hematology

血液内科のしごと・特徴

TOP / 血液内科のしごと・特徴

血液内科医とは

血液内科医の仕事は、高度で最先端の治療に携わることそのものが使命であり、やりがいでもあります。

かつては完治が難しいとされていた悪性血液疾患も、今では新薬や分子標的治療、免疫療法の登場により、劇的に予後が改善しています。
治療法は日々進化しており、医師もまた、常に新しい知識と向き合いながら、よりよい治療を模索し続けています。
ダイナミックに変化する医療の最前線に、自分自身が立ち会えるという実感を持てるのが、この診療科の大きな魅力のひとつです。

また、血液内科は全国的に密なネットワークでつながっており、地方にいながらも全国レベルの診療・情報に触れられる環境が
整っています。大分大学でもその利点を活かし、「地方だから」と医療の質で妥協する必要はありません。

一方で、重篤な疾患を担当する以上、一定数の患者さんとの別れは避けられず、精神的・身体的な負担がかかることも事実です。
さらに、全国的に血液内科医は不足しており、診療体制の過密さが課題となっています。

そのため当科では、週末ローテーション制度を導入するなど、医師の働き方にも配慮した取り組みを行っています。
忙しさの中でも、心身のバランスを保ちながら、長く専門性を磨いていける環境を整えています。


現在、多くの血液悪性腫瘍が“治癒”を目指せる時代になっています。
まさに“日進月歩”のこの領域で、最前線の医療に挑むこと――それが血液内科医の仕事です。

血液内科の強み

世界基準の専門性最前線の知識と経験を直接学べる環境

大分大学医学部 血液内科には、全国的に活躍する専門医が在籍しており、全国どこにいても通用する専門性を身につけることができます。

特に、緒方教授は「移植後HHV-6脳炎」の研究において世界的な第一人者として知られています。血液内科の診療・研究における重要な領域であり、日常診療でも極めて実践的な知見が教授から直接学べる環境です。

また、全国の診療の指針となる各種ガイドラインや『year note』といった医師向け解説書の執筆にも関わっており、血液内科学の最新の知識やエビデンスを現場で直接吸収できる機会が豊富です。

さらに、虎の門病院、国立がんセンター、慶應義塾大学病院など、国内屈指の高度医療機関への留学の橋渡しも積極的に行っており、志のある若手医師がより広いフィールドで学び、経験を積むことができるよう支援体制が整えられています。

教授挨拶を読む

移植・細胞治療。全国水準の実績を大分で

大分大学医学部 血液内科学講座の大きな特徴のひとつに、造血幹細胞移植における豊富な実績があります。
大分県内では、年間50件前後の造血幹細胞移植が行われており、人口比で見ると全国でも上位に入る実施数を誇ります。

この実績は、単に症例数が多いというだけでなく、難度の高い移植医療や細胞治療にも安定して取り組める診療体制が整っていることの証です。
移植医療には高い専門性とチーム医療が求められますが、大分大学ではその両方が確立されており、若手医師にとっても日常診療の中で自然に高度な技術や知識に触れられる環境があります。

大分にいながら、全国レベルの移植医療に携わることができる――それが、大分大学血液内科の大きな強みです。

CAR-T療法 ――治らなかった病を“治せる”時代へ

CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)は、がん細胞をピンポイントで狙い撃ちする、革新的な免疫療法です。
患者さん自身の免疫細胞を加工し、「がん細胞を見つけて攻撃する力」を与えて体内に戻すことで、これまで治療が難しかった血液がん――とくに白血病やリンパ腫など――に対して、極めて高い有効性を示しています。

この治療は、医療の最前線を体現するような高難度かつ高度管理が必要な療法であり、国内でも限られた施設でのみ実施が可能です。

当科は九州でCAR-T療法を3番目に開始しました。現在は九州でCAR-T療法実施可能な施設は、大分大学を含め11施設となっています。
そのうちの一角を担っていること自体が、大分大学の血液内科が全国水準の研究・診療体制を誇っている証です。

さらに、大分大学ではCAR-T療法の実用化にとどまらず、新たな適応症や難治性疾患に対する治験・臨床研究にも積極的に取り組んでおり、これまで「治すことができなかった」患者さんに治癒の可能性をもたらす努力を続けています。

まさに「治療の未来を創る」医療がここにあります。
CAR-T療法のような世界最先端の技術に、大分にいながら日常的に触れられる――それは、この医局で学ぶ大きな醍醐味です。

血液内科のしごとの特徴

血液内科の仕事には、他の診療科にはない独自の特徴が数多くあります。
最先端の医療に関わる知的なやりがいだけでなく、チーム医療・柔軟な働き方・年齢を重ねても続けやすい特性など、「現実的に働きやすい医療」の姿も見えてきます。

多職種カンファレンス:チームで支える医療

血液内科では、患者さんの病状だけでなく、生活背景や経済状況も含めて総合的にサポートする必要があります。
そのため、医師だけでなく、看護師・薬剤師・医療ソーシャルワーカー・造血細胞移植コーディネーター (HCTC)、検査技師、歯科衛生士など、多職種が連携しながら治療方針や退院後の支援について話し合う「多職種カンファレンス」を毎週開催しています。

がん治療には、就労支援や生活支援が不可欠です。
血液内科では「治す」だけでなく、「その人の生活を守る」医療を実践しています。

緊急対応:判断力で支える柔軟な体制

血液内科は、救命救急や集中治療のように即座の処置を要する場面が少ない診療科に見えますが、感染症や腫瘍崩壊症候群、臓器障害や出血症状など緊急時の判断が必要な場面は少なくありません。
夜間や休日に患者の容体が急変した場合には、当直医と連携し、適切な対応ができる体制が整っています。

血液内科ではタスクシフト(役割分担)とチーム医療体制が進んでおり、一人で抱え込むことなく、自然とチームで助け合える環境になっています。

体力面:年齢を重ねても続けられる

血液内科では、長時間の手術や力の要る処置が少ないため、年齢を重ねても無理なく続けられるという特徴があります。
診療の中心は外来・病棟での診察や処方・検査であり、体力的な負担は比較的少なめです。

「一生を通じて、医師として成長し続けたい」――
そんな方にとって、血液内科は知識と経験が積み重なるほどに力を発揮できる診療科でもあります。

とある専攻医の1日の流れ

「CAR-T細胞輸注の日」の場合

8:30

病棟ラウンド

入院患者さんを回り、患者さんの状況を把握

9:00

朝カンファレンス

患者さんの状況、本日行う予定の化学療法や検査や処置についてみんなで共有します

9:15

患者さんの採血データのチェック、輸血オーダー、点滴オーダーなど

クリクラの学生さんと雑談しながらも真面目に指導

10:30

化学療法、骨髄検査、髄液検査および髄腔内抗がん剤投与、CV-line留置などの処置を行う時間

入院患者さんがあれば、本人やご家族へのI.C.も行います

12:30-
13:00 

昼休憩

13:30

多職種カンファレンス

医師、看護師、薬剤師、HCTC、リハビリテーション、歯科、栄養士が移植患者さんの状況を共有します。

14:00

血液内科医師カンファレンス

患者さんの治療方針など重要な決定事項をスタッフ全員で協議、決定します。

15:00

CAR-T細胞療法の輸注

極めて個別性の高い治療であり、輸注は血液内科における高度な専門的対応が求められる場面のひとつです。

16:00

午後 担当患者さんをラウンド

16:30

新薬など drug information、臨床試験などのstart up meeting

新薬に関する情報を通じて、医療がどのように進化しているかを日々実感できる重要な場面です。

17:00

医局会(週1回) or ちょっと午後のほっと一息みんなでコーヒータイム

誕生日にはケーキをみんなで食べたりします。ここで患者さんの経過や治療について、上級医とざっくばらんに相談したり、「こんなテーマで臨床研究がしてみたい」などの相談もします。

Voice

先輩の声

春山 誉実

春山 誉実

入局年: 2019年

腫瘍内科、または血液内科を選んだ理由や
きっかけを教えてください。

一番の理由は研修医時代、突然の病に悩む患者さんに対し、いつも優しく温かく手を差し伸ばし、ときには冷静な決断でリーダーシップを発揮する血液内科の先輩方の「ヒューマニティ」あふれる姿勢に憧れたからです。

また血液内科としての高いスペシャリティに加え、化学療法・造血幹細胞移植・細胞療法の達成には内科医としての総合力を要します。患者さんとともに血液疾患の克服を目指しつつ、患者さんの人生観に大きく関わることで医師としての臨床能力だけでなく、自身も人間的に成長することができると考え血液内科を選択しました。

現在の主な業務内容や、やりがいを感じる瞬間について教えてください。

病棟を中心に造血幹細胞移植、CAR-T療法など血液臨床の先端に携わっています。力を入れている点としては特に血液疾患は病態や治療方針が複雑なため、患者さんにご理解頂けるように丁寧な病状説明を心がけています。

化学療法や造血幹細胞移植においては副作用や合併症で難渋することがありますが、一緒に治療を頑張った患者さんが笑顔で退院し、元気な姿を外来でみると大変嬉しく「次も頑張ろう!」とやりがいを日々感じています。

医師としてのキャリアの中で、印象に残っているエピソードはありますか?

日々印象に残るようなエピソードばかりですが、特に若い患者さんが病名告知や辛い化学療法に直面しながらも、前向きに生きようとする姿にはいつも心を揺さぶられます。苦しいことがあっても夢や家族を思って病気と戦う患者さんの前向きな気持ちに、私たち医療スタッフが逆に励まされることも少なくありません。自身も困難にぶつかった時、共に治療を頑張った患者さんの姿を思い出しながら日々前に進む勇気をもらえます。

これから血液内科を目指す方へのメッセージやアドバイスをお願いします。

大分大学血液内科はアットホームな雰囲気ですが、造血幹細胞移植、CAR-T療法を開始し臨床の最先端を走っています。また働き方改革にも積極的に取り組み、チーム制や役割分担を行いながら、趣味や子育てなどプライベートも充実できる環境が整っています。

今後高齢化、化学療法の発達により血液内科の需要は増すばかりです。総合的な内科の視点を学ぶことができ、セカンドや臨床研修でぜひ血液内科を選択しヒューマニティを味わってください!

麻生 優花

麻生 優花

入局年: 2018年

腫瘍内科、または血液内科を選んだ理由や
きっかけを教えてください。

「この現場で何か力になりたい」と思い血液内科を選びました。

医学部入学時は恥ずかしながら「血液内科」という科自体の存在を知らないくらいだったので、当時の自分が将来を知るとびっくりするかもしれません。

現在の主な業務内容や、やりがいを感じる瞬間について教えてください。

思った以上に内科診療において血液内科の需要はある、ということです。

血液内科は専門性が高く、どちらかというとジェネラリスト的な側面が強く求められる一般の内科外来では応用しづらいんじゃないか、と思っていましたがそんなことはなく、むしろ血液内科的な領域を得意とする医師は内科領域では多くないので、貧血や血球異常等で他科の先生方に頼っていただけることも多く、自分の専門を発揮できる喜びを感じています。

医師としてのキャリアの中で、印象に残っているエピソードはありますか?

たくさんあります。特に患者さんを通したエピソードは、つらいことも、うれしかったことも、たくさんありました。どう述べるか悩みましたが自分の内にしまっておきたいことが多く、具体的に述べられなくてごめんなさい。だけど、出会ったひとりひとりが、今の自分の要素をつくっている、といっても過言じゃないくらいたくさんの、得難いものを貰いました。これは血液内科医であれば個々に差はあれど皆そうなのではないかと、確信しています。

これから血液内科を目指す方へのメッセージやアドバイスをお願いします。

血液内科は一見地味ですが(自分も医学部に入学するまで認知していませんでした)、今血液疾患の患者さんがどんどん増えていく中で治療法も最新のものが次々でてきており、非常にホットな分野であると思います。それに患者さんを通して自分も成長させてもらえる現場だな、と思います。死と向き合う機会もあり、しんどいこともたくさんありますが、同時に「希望」も携えた科だと思います。きっとどんなタイプの人でも何かしら得られるものが多い現場なのではないでしょうか。いつでも人手不足なので、ぜひ、皆さんをお待ちしています。将来別の科を選ぶにしても、研修医の時にみな一度、できれば経験してほしいな、とも思うので、ぜひよろしくお願いします。

西川 匠

西川 匠

入局年: 2022年

腫瘍内科、または血液内科を選んだ理由や
きっかけを教えてください。

私が最初に血液内科に興味を持ったのは、医学科5年生の時の学生実習でした。それまでは別の科に興味がありましたが、血液内科の先生と患者さんの距離が近く、患者さんに寄り添った診療をされている姿を見て、自分のやりたいことはこれだと思いました。

血液内科は学問的にも非常に奥が深く、学生の自分には到底理解できるものではありませんでしたが、逆に、将来これらの知識を身に付けられれば自分にとって非常に強い武器になるのではないかとも思いました。研修医になり、より間近で何の要因もなく造血器腫瘍に罹患してしまった患者さんと接する中で、このような患者さんの今後の人生の相談役になりたいと思い、血液内科を選びました。

現在の主な業務内容や、やりがいを感じる瞬間について教えてください。

私は大分大学医学部附属病院では病棟業務が主ですが、一部外来診療も行っています。日々の業務の中で、患者さんが笑顔で退院できる瞬間や、何事もなく外来へ通院できている時にやりがいを感じます。しかしながら、全ての患者さんの病気が治るわけではありません。そのような患者さん・家族ともよく相談する中で、より納得した最期を迎えられるよう考えることもやりたいことの一つでした。また、血液内科は新しい治療法や治療薬が次々と開発されている分野でもあり、自分が学んだ知識が患者さんの予後に直結するのも血液内科の面白さです。

医師としてのキャリアの中で、印象に残っているエピソードはありますか?

血液内科では様々な症例を経験します。初診時から全身状態の悪い悪性リンパ腫の高齢患者さんで、化学療法後にショック状態にもなったが化学療法が奏効して元気に外来通院している方や、どんな化学療法でも縮小しなかった巨大腫瘤が二重特異性抗体で嘘のように縮小した方もいます。
その一方で、若くして同種造血幹細胞移植まで行ったが早期再発し、緩和ケアへ移行した方もいます。最善の治療を行っても救えない命があった時には、患者さんの最期にできる限り寄り添いながら、今後の血液内科の発展に少しでも貢献できるように頑張ろうとも思います。

これから血液内科を目指す方へのメッセージやアドバイスをお願いします。

学生や研修医の方々は、まず今の勉強や実習を頑張って下さい。その中で、少しでも血液内科に興味のある方は声をかけて頂き、血液内科がどんなものかを肌で感じてみて下さい。今入局を検討している皆様も、目の前の勉強や実習を頑張ることで、全て血液内科に繋がってきます。辛いことや苦しいこともあるかもしれませんが、血液内科医として成長できた先で非常にやり甲斐を感じられる科です。是非一緒に血液内科を盛り上げましょう。

Contact

研修・見学の問い合わせ先

腫瘍・血液内科学講座では、見学・研修を希望される方を随時歓迎しています。
専攻医、初期研修医、医学生など、どのステージにいらっしゃる方でも大歓迎です。
また、現在ほかの診療科に所属されていたり、ほかの医療機関に在籍されている医師の方で、腫瘍内科での診療にご関心をお持ちの方も、ぜひお問い合わせください。
「実際の現場を見てみたい」「話を聞いてみたい」とお考えの方は、どうぞお気軽にご連絡ください。
経験豊富な医師がご案内し、今後のキャリア形成に役立つ機会を提供できればと考えています。

大分大学大学医学部腫瘍・血液内科学講座
Tel 097-586-6275
Fax 097-586-6276

〒879-5593
大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1